ぶきっちょ
「けど、お陰で目覚めた」
からかうような表情から一変。
彼は今まで見たことないような真剣な表情になった。
「もう逃げねぇって決めた。ちゃんと向き合うって」
吉村くんが立ち上がる。
外灯からの逆光で表情はよく見えないけど、あたしの方をしっかり見据えている。
「ずっとずっと、好きだった」
しばらく間を開けてから、あたしと向き合うようにしゃがみこむ。
「浜口さんしか見えねぇんだ、頑張っても。今更都合良すぎって思うかもしれないけど、信じて」
ゆっくり、ゆっくり吉村くんの影が近づいてくる。
「好きだ」
真っ直ぐな瞳に見つめられて、唇に柔らかい感触。
驚きすぎて、抵抗することも目を閉じて受け入れることも忘れていた。
中学時代、近くにいたのに遠くに感じた吉村くん。
その彼が今、あたしの目の前にいる。
上手く思考回路が働かなくて、頭が真っ白。