ぶきっちょ
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卒業式の前日。
俺は卒業証書授与の代表として、皆より打ち合わせのために帰りが遅かった。
教室に戻ると、そこには浜口さんの姿だけがあった。
あぁ、彼女は明日の茶話会の係だっけ。
冬くらいから、何だか彼女との間には距離ができた。
だから彼女がどこの高校志望かなんて知らなくて。
それに第一志望が男子高の俺と、浜口さんは高校が一緒なんてあり得ない。
たぶん、これが二人っきりになる最後のチャンス。
『明日で卒業かぁ…』
中学なんてさっさと卒業して、早く高校生になりたかった。
けどいざ卒業となると、寂しくなる。
何よりも、たぶん何一つ浜口さんに伝えられなかったことに悔いが残る。
『うん』
彼女も何か考えているのか、しみじみとした感じ。
『淋くなるなぁ…浜口さんと会えなくなると』
いつものように冗談でいうことしか出来ないけど。
これが俺の本音。
もっとちゃんと、頑張ればよかった。
そんなことばかりが頭を駆け巡る。