ぶきっちょ



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「吉村ー」


そう言って、いつも塾の休み時間には俺の所に来る。


隣の中学の下田結花。


三年になってから塾に入った俺は、初日と知り合った。


初めて塾に来た日。


後ろ姿がすごく浜口さんに似てて、思わず目で追ってしまった。


そんな俺の視線に気付いた彼女が、俺に声を掛けてくれたのが始まり。


正面から見たら、全然浜口さんの方が美人で。


話し方とか声とかは、少しだけ彼女を連想させた。


学校では、浜口さんと同じクラスにやっとなれたばっかりだった。


「次の英語の小テスト、範囲どこだっけ?」


下田さんがテキストを広げながら、前の席に座る。


俺は自分のテキストを指差して教える。


「……そういえばさ」


下田さんがふと、俺の目を見る。


「例の片想いの相手とはどうなのよ?」


俺をからかうように、下田さんは肘で俺をこづく。


「相変わらず片想いだよ」


俺は苦笑いしながら答えた。















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