ぶきっちょ
下田さんは何でか分からないけど、本音をすごく話しやすくて。
いつも俺の相談に乗ってくれていた。
もちろんそれは、ほとんどが浜口さんのことだったけど。
「そんなにあたしと後ろ姿似てるわけ?」
そう言って、下田さんが俺に背を向ける。
「うん、何となくだけどさ」
俺は苦笑い。
「告白とかしないの?」
また俺を向き直って、彼女がストレートに聞く。
「できないよ」
俺は即答する。
臆病者って言われるかもしれないけど、浜口さんは本当に人気者だった。
俺ら三年にはもちろん後輩からも、去年までだって先輩からも。
男にもてるからって女に嫌われるなんてこともなく、いつも回りには人が集まっていた。
それに最近じゃ、誰一人彼女に想いを伝えられる勇気なんてなかった。
彼女には、好きな人がいる。
それは皆が知っていることだったから。