ぶきっちょ
「じゃーね!!」
街方面のバスに仲良く乗り込む二人を見送る。
静香と明美は最寄りの駅方面へと歩きだす。
バス停に取り残されたのは、あたしと山下くんだけ。
「いつもはこの時間じゃないよね?」
山下くんがふと、尋ねてくる。
「え?……あ、うん」
まだ少し上の空のあたしを見て、彼は微笑みながら言う。
「びっくりしすぎだって!!」
あたしは彼に合わせて笑って答える。
「そだね。けどあたし、二人が西高だなんて知らなかったんだもん」
山下くんはバスの時刻表を見ながら言う。
「俺は知ってたよ。浜口っちゃんが桜高だって」
「え?そうなの?」
あたしが聞き返すと、彼は頷いて時刻表を指差した。
「あと六分」
そう言ってあたしの隣に腰を下ろす。
「アド教えて」
「あ、うん」
あたしは差し出された携帯にアドレスを入力する。
隣で山下くんが話し掛けていたけど、全部聞いてなかった。
頭のなかでは、やっぱり吉村くんのことばかり考えてしまって。