ぶきっちょ
『あ、吉村お疲れ』
俺に気付いたキャプテンが声をかける。
俺はキャプテンの隣に座り、シューズを履き始める。
『どしたんすか?バレー部なんか見て』
俺が来たのに気づいても相変わらず、バレー部に見いっているキャプテンに聞く。
『何かさ、すごいんだよ』
キャプテンが言う。
『は?何がすごいんすか?』
シューズを履き終えた俺は立ち上がり、皆と並んでバレー部の方を見る。
……なるほど。
見た瞬間に皆が見ている理由に気づく程、際立った人物。
他の部員とは比べ物にならないくらい、綺麗なフォームでスパイクを打つ。
綺麗に束ねられたさらさらの黒髪。
周りの部員が彼女を取り囲んで、誉め称えている様子。
そんな部員たちに、少し照れたような笑顔で答える。
『二年って言ってたよ、あの転校生』
キャプテンが言った。
―これが、君との出会い。
そしてこれが俺の初恋だった。