ぶきっちょ



「じゃーね!!」


千夏ちゃんがそう言って、浜口さん達と友貴に手を振る。


ブザーと共にバスの扉が閉まり、バスがゆっくり加速する。


浜口さんと友貴以外の二人は駅の方へと歩きだしたようだ。


バス停には友貴と浜口さんの二人っきり。


「何かあの二人お似合いじゃない?中学のとき仲良かった?」


千夏ちゃんが座席の後ろに乗り出して、バス停を見て言う。


「…うん、仲良かったよ」


俺はそちらを見ずに答える。


嬉しそうに笑う千夏ちゃんとは正反対に、少し気分の沈む俺。


千夏ちゃんの事を大事にしようと思ったのに。


浜口さんを忘れるって決めたのに。


第一、彼女を振ったのは俺の方なのに。


「ねぇねぇ、由香利の中学時代ってどうだった?」


無邪気に聞いてくる千夏ちゃん。


俺は色々な感情を必死に抑えて、浜口さんのことを話す。


「すっごく人気者だったよ」
















< 83 / 213 >

この作品をシェア

pagetop