ぶきっちょ
「じゃーね!!」
千夏ちゃんがそう言って、浜口さん達と友貴に手を振る。
ブザーと共にバスの扉が閉まり、バスがゆっくり加速する。
浜口さんと友貴以外の二人は駅の方へと歩きだしたようだ。
バス停には友貴と浜口さんの二人っきり。
「何かあの二人お似合いじゃない?中学のとき仲良かった?」
千夏ちゃんが座席の後ろに乗り出して、バス停を見て言う。
「…うん、仲良かったよ」
俺はそちらを見ずに答える。
嬉しそうに笑う千夏ちゃんとは正反対に、少し気分の沈む俺。
千夏ちゃんの事を大事にしようと思ったのに。
浜口さんを忘れるって決めたのに。
第一、彼女を振ったのは俺の方なのに。
「ねぇねぇ、由香利の中学時代ってどうだった?」
無邪気に聞いてくる千夏ちゃん。
俺は色々な感情を必死に抑えて、浜口さんのことを話す。
「すっごく人気者だったよ」