ぶきっちょ
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「悠斗くん、今日はありがとね」
そう言って彼女は優しく微笑む。
二人で街をぶらぶら歩いて、飯を食って。
彼女を家まで送っていく。
俺は正直、浜口さんのことばかり考えてしまって。
途中途中で上の空だった。
千夏ちゃんは楽しく過ごせたみたいでほっと一安心。
「また帰り着いたらメールする」
俺はそう言って彼女の頭を軽く撫でた。
彼女は照れたように笑い、そっと背伸びをする。
触れるだけの一瞬の口付け。
「おやすみ」
彼女は真っ赤な顔を隠すように、慌てて家の中に入っていく。
そんな彼女を見ながら、俺は何だか複雑な気持ちを感じていた。