ぶきっちょ
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『あの転入生、彼氏いるらしいぜ?』
浜口さんが転入してきてすぐ、友貴がくれた情報。
友貴は顔が広くて、情報が早い。
『マナミが言ってた』
そう付け足す。
マナミと呼ばれる子は、最近友貴と仲のいい子。
確か浜口さんと同じクラスで、めちゃくちゃ美人。
…あまりいい噂は聞かないけど。
『そっか……』
あからさまに落ち込む俺に友貴は苦笑い。
『彼氏なんて関係ねぇだろ?』
どうせ遠距離だし、そう付け加えた友貴は俺の肩に手を載せる。
『いいよ、気にしなくて』
俺は無理矢理笑った。
気にしなくていい。
どうせ叶わない恋だし。
初恋なんて実らないって言われるし。
何より俺は、今のままで十分だった。
見てるだけで。
踏み出す勇気もないし。