ぶきっちょ
「へぇ……」
俺は必死に平常を装おって答える。
「お姉さんほど美人じゃないっすけど、めちゃいい子なんすよ」
そうのろける。
俺はしばらく彼女のノロケ話を聞かされながら、また彼女を思い出す。
妹の話も、よくしてたっけ。
見たことはないけど。
「今日彼女の家寄ったら浜口さんにも会いましたよ」
何も知らない彼は、彼女の話を出す。
「やっぱりまじ美人っすねー。俺も憧れてましたもん」
こいつだけじゃなく、きっとほとんどの後輩はそう思っていただろう。
まぁそれは後輩に限ったことじゃないけど。
「俺ずっと浜口さんと吉村さんって付き合ってたんだと思ってましたよ」
「え?」
急に俺の話に戻って、俺は驚いて問い返す。
内容が内容だけに、かなり動揺する俺。
「クリスマスに彼女さんと歩いてたの見たことあって……」
後ろ姿だけなんですけどね、と彼は付け足す。
「別人だよ」
クリスマスは下田さんと過ごした。
確か塾帰りに二人で街に行ったっけ。
「浜口さんにも言われました」
そう彼は言って笑う。