ぶきっちょ
「送ってくれてありがと」
千夏ちゃんはそう言って、少し背伸びをする。
そしていつもの口付け。
「テスト勉強で疲れ溜まってるところにごめんね」
そう言って俺を心配そうに見つめる。
どうやら彼女は俺が今日ぼんやりしていたのを、勉強による疲れであると思っているらしい。
「ううん。楽しかったよ」
俺は笑顔を作って彼女の頭を撫でる。
彼女は少しだけ頬を赤く染めて、笑顔で家へと入っていく。
俺は一度大きなため息を漏らして来た道を引き返す。
バスに乗り込んで窓際の席へと座り、いつも眺めている景色をただただぼんやりと見ていた。