ライギョ
「また乗りたくなったらいつでも言ってください。ヘリ出しますから。」
ヘリポートに付き迎えに来た高級車を待たせ竹脇が言う。
こいつ、ほんとに稼いでるんだな。
「うん、ありがとう。素敵な経験させてもらえた。感謝するわ。それとーーー私の事を、覚えてくれてて嬉しかった。」
「忘れるわけ無いですよ。伝説の戦士ですから。それと今度、酒飲みに行きますね。こいつと。」
「えっ?た、竹脇、何言ってんの?お前、引き篭もりじゃ…」
「あのな、僕も僕なりに生きる意味は考えてるつもりや。この前もいうたやろ。いつまでもデイトレしてられへんって。そろそろ資金の使い道、真剣に考えてるんや。その下調べもあって今度、東京行こうと思ってる。ただし、まだ電車は厳しいからヘリでな。」
ほなな、って明るく言うと車に乗り込んだ。
スモーク張りの窓をスッと開けると俺を指先で呼ぶ。
なに?って顔を窓に近付けると
「あのさ、お前覚えてるか?」
「なにを?」
「僕が学校に行かへんくなりだした時にクラスのみんなでメッセージみたいなん書いたやろ。」
ああ…確かに。
「覚えてるよ。でも俺、なんて書いたっけ?」
「フンッ、まぁ、ええわ。僕はあの言葉、気に入ってる。それだけいつかお前に会ったら言おうと思ってたんや。じゃあーーー」
ーーー後は上手くやれよ。
「た、竹脇っ。」
それだけいうと竹脇の合図で車は走り出した。
「あいつ…」
本当は覚えてるよ。
きっと竹脇もわかってるはずだ。
俺が照れくさくて覚えてないフリをしてること。
大したことは書かなかった。
待ってるから学校へ来てねとか
ずっと友達だよとか
そんなの書くのはなんか違うって思ったから…
だからーーー