ライギョ
「それで?行くんでしょ?今度、大阪に。」


「えっ、ああ、行きます。」


「あれから半年かぁ。あっという間だったね。」


「はい、あっという間、ですね。」


あの夏の暑い日、安田の妹と接触した俺達はあれから何かが劇的に変わったと言う事もない。


いや、多少は変わったか。


山中と小夜子はどうやら本格的に結婚の話を進めているらしい。


漸く自分自身として小夜子に向き合えたって山中からメールが後で送られてきた。


竹脇はどうやら企画会社の様なものを立ち上げるらしい。


何やらアイドル向けの劇場を作り、ネットで常にLIVEの模様を配信するとかなんとか…


「俺みたいな引き篭もりのやつでもLIVEを楽しみたいって言う気持ちはあるんや。引き篭もりにだって楽しむ権利は平等にあると思わんか?」


随分と熱いメールに竹脇の意気込みが伝わってくる。


けれど、急には変われない部分もあって、会社立ち上げの準備で外に出る機会が増えたそうだけど、相変わらずその移動は運転手付きの高級車かヘリ。


「物事、なんでも焦ったらアカン。リハビリが必要なんや。リハビリがな。」


竹脇も間違いなく進み始めている。


その竹脇からラビりんZこと原 妃咲の近況も聞くことが出来た。


竹脇と原 妃咲はその後もネットを通じてやり取りしているそうだ。


そして、驚いたことに彼女は竹脇の念願の劇場が完成した際には一期生として舞台に上がる予定だ。


二人の間にどういう会話があってそうなったのか俺には分からないけど、原 妃咲にとってそれも生きていく意味の一つとなるなら悪くない、そう思えた。


そして、俺はーーー












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