ライギョ
「漸く、ちゃんと安田を送ることが出来そうです。」


俺達はその結果を受け大阪で安田とのお別れ会をする事にした。


安田の母親はあまりのショックに気がふれてしまって今は入院中だそうだ。


けれど、安田のお父さんはどこかホッとした様子でその話を受け止めていたらしい。


その知らせを原 妃咲経由で竹脇から聞いた俺達も漸く安田との別れを受け入れる準備が出来た。


俺はなんとしてでも休みを確保して大阪に行けるよう今、仕事をかなりオーバーワークしている状態だ。


きっと、俺が相当無理してるのが千晶さんに伝わってるのだろう。


「一つ良いですか?」


俺はあいつに刺激されたからじゃない。


そんな言い訳を心の中でしながら千晶さんに告げる。


「きっと大阪に行って帰ってきたら大丈夫じゃないと思う。その時はーーー」







ーーー俺の事、慰めてくれますか?







今の俺が言える目一杯の告白だ。






目の前の千晶さんは少し驚いた顔をしたけど、直ぐに優しい笑顔を浮かべると


「いいの?帰ってきてからで。私はいつでもそのつもりだけど。」


千晶さんの細い指先が俺の頬に軽く添えられた。


「本当は少し怖いんだ。今でも。頭では理解してるのにそれでも安田の死を受け入れる事に不安を抱いている。」


「仕方ないよ。多感な時期にそれほどの経験をしたんだもの。怖かったね。ずっと。」


「慰めてよ…」


そう言いながら頬にある千晶さんの手に自分の手を重ねる。


そして、その手の先にそっと口付ける。


自分でも大胆な事をしているなって思うけど、やはりあのバイト野朗ににけしかけられたせいなのか?


「いいわよ、私、キミのこと嫌いじゃないから目一杯、慰めてあげる。」


「期待してもいいーー」


言葉は最後まで言い切れなかった。


言い終わらないうちに俺が性急に千晶さんの唇を奪ったから。


















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