ライギョ
「お前、大阪城の雷魚の話、聞いたことあるか?」


昼休み、教室で弁当を食いながら山中が突然、言い出した。


「雷魚って……お堀の?」


俺は今朝、中学校の近くにある榎本ベーカリーで買ったミカンサンドを頬張りながら山中に答えた。


相変わらず、不味そうなん食ってんねんなぁと
呆れた顔をしながらも山中の話は続く。


「そうや、お堀の雷魚や。あそこの雷魚はデカいのん知ってるか?」


「デカい?」


「そう、デカいねん。あそこの雷魚は兎に角デカくて大体が1Mくらいはあるやろ。でもな、一匹だけ滅多に姿は見せへんらしいけど、
段ちに大きいのんおるらしいわ。お前、生クリーム口の端、付いてるで。」


俺は山中に指摘され慌てて口許をハンカチで拭きながら聞き返した。


「段ちってどのくらいやねんな?」


生クリームが付いていることを指摘され、つい動揺して聞き返してしまっただけやのに、俺が珍しく話に食いついてきたと勘違いして山中は嬉しそうに目を輝かせている。


どうやら山中のテンションスイッチをonにしてしまったらしい。ニヤニヤしながら山中は俺に言う。


「大人くらいの大きさはあるらしいで。つまりは2M近くはあるらしい。」


「ふうん。」


とだけ答えるとその返事が物足りなかったのか
山中は急に真面目な顔して続けた。


「でもな、それだけやないねん。」


「どういうこと?」


取り敢えず、聞き返すと


山中は少し俺に近づき耳打ちした。


「呪いや。」


「呪い?」


「そうや。淀君の呪いや。」


そう言うと、山中は弁当のご飯を一気に掻き込んだ。










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