ライギョ
「ふうん……退屈ねぇ……」


なんで休日に一人でショッピングをしていたかって話から俺は、今、千晶さんに一ヶ月前に終った元カノの話をしていた。


思えばこういう話を千晶さんにするのは初めてかも知れない。


「もっと刺激的な日々を求めてたんじゃないですかねぇ。なんでしたっけ?壁ドン?とかしたりとか?」


「ふふっ、なにそれ。だけどさぁ、そもそも彼女とちゃんとデートしてたの?仕事終わりに電話だとかメールだとかもしてた?」


千晶さんの言葉に何も言い返せない……


バツの悪そうな俺の顔を見て、「やっぱりね」と呆れ顔で言う千晶さん。


確かに…俺は仕事が忙しいのを理由にデートもロクにしていなかったし、メールの返事もそこそこにしか返していなった。


「彼女……退屈ですよね……」


彼女に対して未練があるわけじゃないけれど、今となるとあまり大切にしてあげなかった事を少し悔やむ。


「悪いと思うなら次に出会った子とはちゃんと恋愛をすることね。気になる子とかいないの?」


千晶さんはそう言うながらカウンターの中から出てきた。


「えっ……そりゃ……」


ーーーー今、目の前にいますよ


とは言えず、ドギマギしてる間に千晶さんはまたパソコンの前に座ると何事も無かったかのように、いや、実際何事も無いんだけど忙しげに何やら書類を睨みだした。


ーーーなんだ、ちょっと誘われるのかと思った


なんて事は口が裂けても言うまい







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