ライギョ
「仕事でこっちにはよく来るの?」


「うん、ああ、まぁ…。」


「ふうん。」













正直、何を話せばいいのか10年と言う時間の長さを思い知らされる。


これが例えばあの事が無かったのなら、単に飲んでバカ騒ぎするような再会になったのだろうか?


俺がそんな事を考えていると


「お前……なんか、すっかりこっちの人やな。」


「えっ?」


山中は相変わらず手元のグラスに視線をやりながらぽつりぽつりと話す。


「いや、だからその話し方とか……なんかそのファッション雑誌とかに出てきそうなシュッとした感じの服装とか……」


俺と同じ歳にしては少し落ち着いた感じではあるものの目の前にいるのは確かに山中だ。


「言葉は……転校したての頃クラスのやつにからかわれるのが嫌で。服は‥…どうかな。適当だよ。」


千晶さんは俺達の様子を見てワケありを察したのか店の奥にあるSTAFF ROOMと書いてある部屋に入ったきり出てこない。


きっと山中も俺と同じ思いなんだろう。これ以上、話すこともないとジンロックを一気に飲み干そうとしたら


「同窓会の案内、来たか?」


山中が漸く俺の目をしっかりと見て言った。


  
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