ライギョ
「中学の頃、一時期好きやったことがある。だけど山中くんもそうやけど中学の頃のあんた達は恋愛とかよりも男同士でぎゃあぎゃあ騒ぐばかりが楽しそうやったもんね。」


「確かに……。」


「思い切って告白でもしようかと思った矢先にあんな事に…。」


あんな事ーーー


そう、あんな事が無ければ俺はまだこの土地にいたのだろうか?


コテコテの大阪弁を話し、今日みたいに友達と酒を普通に酌み交わしていたのだろうか……。


「まぁ……今更、よね。起こってしまったことは仕方ない。それよりかは今。今を大事にしないとね。」


小夜子が自分に言い聞かせるように言う。


「だな…。それで山中がどうかした?」


「うん……山中くんは確かにあの件以来、すっかり人が変わったのよ。それくらいは想像つくよね?」


「ああ、確かに。」


いつだって輪の中心にいた山中は、あの日以来人を寄せ付けなくなった。


「それでまぁ、いつものお節介で何かと山中くんに話しかけたりしてるうちに少しずつ山中くんも心を開いてくれるようになって…。」


「ふぅん、そうなんだ。」


「でもお互い社会人になってからはそれほど頻繁に連絡取ることもなくなって暫く疎遠になってた。」


「ああ、それで偶然に再会したとかって?」


「うん、そう。居酒屋でね。でまぁ、後はね?」


「それで付き合ったんだ。」


「うん……だけど付き合ったのはホント、最近。」


「そうなの?」


「うん。あんたの鈍さも大概やけど、山中くんはその遥か上を行くからね。」


「確かにね。」


「あまりにも鈍感やから、こっちからけしかけた。私はボランティアであんたの側にいるんじゃないって。このままここで黙って私に押し倒されるか、それともその気がないならとっとと私の前から消えて二度と現れないでって言ってやったのよ。」


一瞬、口がポカーンと開いたままになったけど俺は直ぐに吹き出した。



















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