ライギョ
ベッドから起き上がると着ている服を脱ぎもう一つのベッドに放り投げる。
またたく間にもう一つのベッドは鞄や脱いだ服により占拠される。
俺はユニットバスに入ると熱めのシャワーを浴びた。
長い一日の疲れを取り、頭をスッキリさせる為だ
一通り体を洗い、頭からシャワーを打ち付ける。
ユニットバスのシャワーカーテンに跳ねた水滴が勢い良く当たり、室内にその音が響く。
その音だけに集中していたいのに、俺の頭はそうはさせてくれないらしい。
ーーーー安田として生きていく
そんな事ってあるのだろうか?
仮にあったとしても俺には到底理解できない。
確かに再会した山中は口数が少なくなっていた。
けれどそれは単に10年という月日がそうさせるんだと俺は思っている。
実際、あの出来事の後、既に山中の人格は確実に変わりつつあったし。
それに二度目の再会を果たした今日の山中は至って普通だったじゃないか。
本拠地である大阪での再会。
隣に座る小夜子の存在。
馴染みのある居酒屋。
それらが山中をリラックスさせていた。
前回あった時、延々とどうでもいい傘の話をした時とは訳が違う。
だから今、振り返ってみてもそんな山中に対して特に安田を意識しているって事はなかっーーーー
俺はここに来て、漸く気付いた。
実は前回、山中に会った際も、今日もどこか山中に違和感を感じていた。
それは取るに足らないほどの違和感。
きっと長い年月を経ての再会故に感じるものだと、その思いを飲み込んでいた。
いや、完全に流していた。
だけどーーー
ついさっき小夜子から聞いた話で今、漸く俺は気付いた。
いや、思い出したのだ。
この事を小夜子は既に気付いているのだろうか?
これも小夜子の言うそれなのだろうか?
山中は本来、右利きだったって事。
山中に感じたほんの少しの違和感。
それは今日、山中は左手を使い器用に食べていたから。
別に利き手が変わることだってあるとは思う。
けれどそこに安田が左利きだったって事を結びつけるのは俺の考えすぎなのだろうか。
俺はただ立ち尽くしたまま熱いシャワーを浴び続けた。
またたく間にもう一つのベッドは鞄や脱いだ服により占拠される。
俺はユニットバスに入ると熱めのシャワーを浴びた。
長い一日の疲れを取り、頭をスッキリさせる為だ
一通り体を洗い、頭からシャワーを打ち付ける。
ユニットバスのシャワーカーテンに跳ねた水滴が勢い良く当たり、室内にその音が響く。
その音だけに集中していたいのに、俺の頭はそうはさせてくれないらしい。
ーーーー安田として生きていく
そんな事ってあるのだろうか?
仮にあったとしても俺には到底理解できない。
確かに再会した山中は口数が少なくなっていた。
けれどそれは単に10年という月日がそうさせるんだと俺は思っている。
実際、あの出来事の後、既に山中の人格は確実に変わりつつあったし。
それに二度目の再会を果たした今日の山中は至って普通だったじゃないか。
本拠地である大阪での再会。
隣に座る小夜子の存在。
馴染みのある居酒屋。
それらが山中をリラックスさせていた。
前回あった時、延々とどうでもいい傘の話をした時とは訳が違う。
だから今、振り返ってみてもそんな山中に対して特に安田を意識しているって事はなかっーーーー
俺はここに来て、漸く気付いた。
実は前回、山中に会った際も、今日もどこか山中に違和感を感じていた。
それは取るに足らないほどの違和感。
きっと長い年月を経ての再会故に感じるものだと、その思いを飲み込んでいた。
いや、完全に流していた。
だけどーーー
ついさっき小夜子から聞いた話で今、漸く俺は気付いた。
いや、思い出したのだ。
この事を小夜子は既に気付いているのだろうか?
これも小夜子の言うそれなのだろうか?
山中は本来、右利きだったって事。
山中に感じたほんの少しの違和感。
それは今日、山中は左手を使い器用に食べていたから。
別に利き手が変わることだってあるとは思う。
けれどそこに安田が左利きだったって事を結びつけるのは俺の考えすぎなのだろうか。
俺はただ立ち尽くしたまま熱いシャワーを浴び続けた。