ライギョ
窓際の席に並んで座りぼんやりと外の景色を見る千晶さんを俺は窓ガラス越しに盗み見る。


リラでしか会わない千晶さんが今、俺の隣に座っている、この大阪という街で。


その事実だけで俺は心臓がどうにかなりそうなくらい早く動いている。


一旦、目線をどこかへ外すもののまたそっとガラスに映る千晶さんを盗み見る。


今日も、いや、いつだって千晶さんは美しい。


だけど今はその美しさに見惚れている場合じゃない。


とは言え、先程から黙り込んでしまった千晶さんに何て言葉を掛ければ良いのか、生憎俺の頭の中にはそういったボキャブラリーはない。


「私ね………」


「えっ?」


「この街に住んでた事があるって前に言ったよね。」


「あっ、はい…。覚えてますよ。OLしてたって。えっと、だから今回、来たんですよね?当時のお友達に会うとかってその時、言ってましたもんね。」


記憶に残る言葉を全て出し尽くす。


「うん………春に結婚した友達にね。」


「じゃあ、今日これから会いにいくんですか?」


時計を見るともう直ぐ昼に差し掛かる頃だった。このまま昼飯でもどうですか?と言いたい所をぐっと堪えて言う。


「うん、そうね。そのつもり。」


「じゃあ、これ飲んだら出ますか?えっと最寄り駅ってどこでしたっけ?俺もこっちは随分と久しぶりなんで……」


「一緒に会ってくれない?」


「えっ?」


ちゃんと聞き取れたけど、意味を理解すべくもう一度聞いた。


「今、何て言いましたか?」


「あのね、今日これから一緒に来てほしいの…。」


呆気に取られる俺を無視してそのまま話す千晶さんの言葉を聞きながら、何となくつけていたホテルのテレビから聞こえていた朝の情報番組の女子アナが甲高い声で言ってた占いを思い出していた。


ーーーー最下位は獅子座のあなたです。思わぬトラブルに巻き込まれパワーダウン。でも大丈夫。そんなあなたへのラッキーメニューは……


千晶さんが漸く話し終わったと同時に俺は占いなんて信じないんだけどなって思いながらも思い切って言ってみた。


「えっと、もし良かったら行く前にフルーツサンド食いませんか?お薦めの店があるんです。」











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