ライギョ
その後の出来事はなんか夢でも見てる感じがしてた。


自分の足元がフワフワとしてて現実っぽさが無くて…。


安田は結局、戻らなかった。


お堀に落ちて二度と上がってくることは無かった。

それを世間の人は死んだ、と言うた。


けれど俺らは誰一人、安田が死んだとは思ってへん。


だってそうやろ?


あの後、警察やダイバーの人やら来て散々探したけど安田は見つからんかった。


夜ならまだしも日が明けて濁った堀の水も多少見通しがよくなったところで安田は見つからんかった。


流れのある川ならまだしも、安田が落ちたのは堀や。


安田が見つからん以上、安田が死んでしまったとは思われへんかった。


じゃぁ、安田は一体どこへ行った?って言われても何とも答えられへんけど……ただ、俺らは安田は絶対生きてる。


理由とか無いけど、そうとしか思えなかった。


けれど、


少しの間、続いた捜索は結局、安田が見つからんまま打ち切られた。


安田んちの人が、警察に断ったらしいって誰かが言うてた。


そして、


それを合図に安田は死んだ、って事になった。





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