ライギョ
「の、ろい?」


「そうです。淀君分かりますよね?」


「ああ、もちろん。浅井三姉妹の長女。後に秀吉の側室となり秀頼の母。だよね?」


唐突過ぎる質問に何か策略があるのかと様子を見ながら答えると


「うちの母は自分が淀君の生まれ変わりやと信じてました。」


「えっ、うま、れ変わり?」


「子供の頃に言われたそうです。祈祷師だかなんだかに、この子は淀君の生まれ変わりやと。」


「ごめん、話が突拍子過ぎて…」


10も離れた子を前に成すすべもない自分が情けない。


「いえ、無理もないです。僕も最初は理解できませんでしたから。結局のところ、そんなん全部、嘘ですよね。」


安田の身代わりに育てられたと言うこの子は、これまでどれだけのものを諦めてきたのだろうか。


淡々と話すその様にふと、そんな考えが過ぎった。


「うちのお母さんの実家ってそれなりに地位も財産もある家なんですよ。でも中々、子供に恵まれなかったらしくあちらこちらの祈祷師やら占い師やらに相談に行ってたそうです。数打てば当たる、ですかね。」


「あ、ああ…」


「で、その内の祈祷師だか占い師の予言が当たり、見事生まれてきたのが僕のお母さん。」


「へぇ…」


「興味ないですか?」


「えっ、いや、あるよ、ある。なんで?」


「だってさっきからへぇとかああ…とかそんなんばっかり言うてるから。」


「いや、なんかまだピンと来なくて…この現状に。決して君の話に興味が無い訳じゃないんだ。ごめん。」


「ああ、まぁ、そうですよね。急に言われても…ですよね。でもまぁ、そんな長い話じゃ無いんで。続けますね。」


僕は頭を整理する間もなく彼女の話を更に注意深く聞いた。







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