ライギョ
「それでまぁ、やっと生まれてきたお母さんはめちゃくちゃ大事に育てられたそうです。でもね、ある時、祈祷師だか占い師が言うたそうです。この子には淀君の呪いが掛かってると。」


「えっ?」


「淀君の無念な死が呪いとなりそしてその呪いを抱えたまま、僕のお母さんに宿ってしまったと。」


「そんな無茶な…。」


「まぁ、むちゃくちゃな話ですよね。そんな訳ないですよ。今時、呪いとか。でもね、要は祈祷師だか占い師は金を巻き上げればいいだけの事なんですよ。その厄を取り除きたければ水晶買えだの掛け軸買えだの…ああ、後、定番の壺もあったなぁ。」


「買ったってこと?」


「そうですね。祖父母の家には訳の分からんそういうのがいっぱいありました。僕、一回、壺蹴ってしまったことあってその日の晩ごはん貰えんかったし。」


原 妃咲の口から出てくる話は嘘っぽくもあるけれど、どれもが本当の話なのだろう。彼女のポーカーフェイスの奥に潜む深く暗い色をした瞳にそれを感じるからだ。


「母が結婚して兄が生まれた時、言われたそうです。この子は長生きできないと。だから、ーーー」


「祈祷って事?」


「まぁ、そうなりますよね。金持ってるやつから金を奪うには簡単な理由ですよ。でもそれだけじゃなかったんです。」


「どういう事?」














「それは、俺から話すわ。」















突然の声に振り返ると山中がいた。





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