ライギョ
生きる意味
「竹脇?お、お前…どないしてんその格好。」
驚く山中の言葉に
「山中、そこは格好よりも引きこもりがここまでやって来たこと褒めてや。」
「あ、ああ…そうやな。うん、ほんまや。引き篭もりのお前がここまで来るとかあり得んわ。」
確かに竹脇はあの出来事以来、学校から遠退いた。
いつしか周りは彼を引き篭もりと言う括りに縛り付けた。
けれど、その彼が、竹脇がここにいる。
榎本ベーカリーにすら代理人を行かせてると言ってた竹脇が、ここにいる。
「竹脇、大丈夫なのか?無理してるんじゃ…」
俺がやっとの事で口にした言葉に竹脇は
「他でもない残業戦士庶務ニチカちゃんからの緊急出動要請が来たからな。そら、出動せんわけにはいかんやろ。」
なんていうか…
この緊迫した空気の中、戦争映画に出てきそうなコスチュームを着た竹脇を見ていると
確かにそうだな。
「生きてるうちは生きてるうちにしか出来ない事をやるべきだね。」
俺は何故か今、とても泣きそうだ。
誰にも悟られないよう目線を丘の向こうに見える海の方へと移した。