ライギョ
あの後、竹脇が原 妃咲と二人で話したいと言うので駐車場で待つことにした。


竹脇はあんな格好だし、年の差だって一目瞭然だし他の誰かが見て不審者だと通報しないかと心配したけれど原 妃咲の大丈夫です、と言う言葉を信じる事にした。


考えてみればこのメンバーの中で誰よりも原 妃咲とまともな会話をしてきたのは竹脇だ。


きっかけはどうであれ、お互い共通の話題も多いのだろう。


なんだよ、昨夜、寝る時間削ってまで覚えたというのに。


ふと、そんな事を思ったけどお陰で千晶さんと特別な時間を過ごせたのだから良しとするか。


小一時間経った頃だろうか。


竹脇と原 妃咲が揃って俺達が待つ駐車場にやって来た。


「待たせたな。」


「えっ、うん、いや、えっと…」


「フッ…、お前のそういう挙動不審な感じ、いっこも変わらんな。」


「えっ、俺?」


竹脇の言葉に確かに…って納得する。


「もうええんか?」


山中が俺と竹脇のどうでもいい会話をさえ切るように言った。


それは原 妃咲に向けられてるものなのだろうけど、視線は竹脇へと投げられている。


「ああ、もう大丈夫だよな?」


竹脇が原 妃咲に声を掛ける。


「はい、大丈夫です。」


確かに先程とは違う迷いのないはっきりとした声で原 妃咲が答えた。



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