ライギョ
「はあ…もう、ほんと、男ってなんでこうも単細胞なんかな。確かにこの前の晩二人で会ったよ。三人でご飯食べたあと、もう一回呼び出した。だけど、それは山中くんの事を相談してたんや。山中くんがどこか遠くへ行ってしまいそうで不安やねんって。」


「小夜子…」


「ねぇ、肝心なキミの気持ちは?安田くんでもなくキミの心はどこにあるのよ。」


千晶さんが小夜子に寄り添いながら続ける。


「なによりも大事なのは今なんじゃないの?確かに残念な出来事ではあるけど、それもこれも含めた上で今、自分がどうしたいのかって事でしょ?」


その場に沈黙が流れる。


辺りはすっかり日も落ちてきて暗くなり始めていた。


いつの間にか海の方も人が疎らだ。


「俺はーーー」


山中が絞り出すような声で言った。


「俺はーー小夜子を誰にも渡したくない。安田のことを思ってとか格好つけてたけど、結局は俺が小夜子を…好きなんや。こいつだけは誰にも渡したくないって。俺の心は小夜子にある。」


「山中くん…」











「なぁ、ボチボチ帰らへんか?『魔法ラビット飛んでけラビりんちゃん☆』が始まる時間までには帰りたいねん。」


竹脇のその言葉にまた沈黙が流れた。










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