ライギョ
「私、まさかヘリコプターに乗るような事があるなんて思いもしなかったわ。」
今、俺と千晶さんと竹脇は竹脇が所有するヘリに乗り大阪へと向かっていた。
「もう着きますよ。」
「えー、残念。もっと乗っていたいわ。夜景だって今からどんどん綺麗になるのに。」
俺達は山中と小夜子を置いて竹脇のヘリで帰ってきた。
実は千晶さんがただならぬ状況に竹脇にも連絡していたらしい。
「そりゃあ、ニチカちゃんの頼みとあれば飛んでいくよ。今こそ引き篭もり魂なめんなよって。」
得意げに話す竹脇に溜息しかでない。
つか、そのニチカちゃんって呼ぶのやめろよな。
つか、なんで竹脇の連絡先を千晶さんが知ってるんだよ。
色々と言いたい事があるけれどなんせこの高さには言葉も出ない。
「キミが高いところ苦手だとわねぇ。この数日間で君のこと、随分知る事が出来たわ。あっ、見て、あれお城よね?大阪城?」
ーーー大阪城
その言葉に俺は今の今まで目を背けていた外の景色を見た。
下に広がる夜景。
そこにライトアップされた大阪城があった。
あの大阪城が、
「上から見ることなんて無いから不思議だな。」
俺がそう呟くと
「ああ、そうだな。でも大阪城に変わりはないな。」
竹脇も静かに見下ろしながら言った。
「うん、ほんまやな。」
俺が自然に呟いた大阪弁に竹脇は何も言わなかった。