コンビニエンスな関係
「ヒロ、聞いてる?」



私にだって聞こえるくらいの声だから、聞こえないわけがない。



「何、書いてるの?」



彼女の高い声が耳障りだと思いながら、運ばれてきたランチに箸をのばした。



とりあえずは、食べることに集中しよう。私は、いつもよりゆっくりと、味わいながら食べた。



隣のテーブルでは、彼女がひとりでしゃべり、彼は「ふーん」「そう」くらいしか言わない。



そのうち、食事が終わったのか、彼女が席を立った。彼は、黙って伝票に手を伸ばし、立ち上がった。



そして、私に背を向けるようにして、テーブルとテーブルの間をすり抜けていった。



…走り書きをした、紙きれを…私のテーブルに残して…。



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