スキと言えるまで。
「若いっていいわねぇ…。」
「樹の嫁が若葉ちゃんだったら、文句も何もないんだけどな。」
パパさんママさん。もうやだ。
恥ずかしくっていたたまれない。
そもそも樹は振られたばっかりだし、私なんて妹のようにしか思ってないし。
「もういい加減にしろよな!
ほらさっさと行くぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!
ママさん着付けありがとうございましたー!」
樹に腕を引っ張られて、急いで家から出される。
着物だからそんなに動けないんですけどこっちは。
髪型も崩したくないし。
新年だから街は騒がしいけど、私たちふたりは無言で。
間に流れてる音は下駄の音だけ。
私の目に入るのは樹の背中。
さっきからこっちを一度も向いてくれないし。