代償 2nd mean
「朝ごはん、何がいい?」
「………鮭」
答えるんだ。
鮭て………昨日のおかずだったよね?
残って………いるね。
確か。

キッチンに立つ。
「記憶なくても、舌は変わらないんだねー」
嬉しいって言えば嬉しい。
新しいレシピを考案しないで済むから。
何で日本食が好きなのかな。
前、聞いた愛鷹総長かな。
影響するのは。

あやふやな過去を整理出来てない。


味噌汁をつくっていると。
慶佑は起きる。
「………出汁は?」
「煮干だよ」
鍋を覗き込んで。
メガネのレンズを曇らせる。
二重瞼がまだ眠いと言っていた。
寝癖が付く髪。
昔なら、こんな表情は見せなかった。
朝帰りだったから。

鮭をつついて。
テレビを見て。
「………まだか」
小さく呟いた。
「何が?」
「………いや。何でもない」
アナウンサーが今日の天気を知らせ。
淡々とした今日も始まった。
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