代償 2nd mean
「───」
窓の外を眺め。
これもいつも通りで。
家事をしながら見てる。
「………文香」
「コーヒー?」
「うん」
「熱いの?」
「うん」

コーヒーの粉に湯を注ぐと、ふわっといい香りがした。
「はい」
カップを渡して。
「………粉、変えた?………香りが違う」
「うん。いつもの粉、きれちゃって」
「………」
ブラックで平気な顔して飲んで。
美味しい?
私も飲んでみたいけど、身一つだし。
身二つにならなきゃ、飲めない。
「………慶佑、美味しい?」
「うん。………でも、苦味が強い」
「そっか」
苦味が強くても、表情一つ崩さない。
コーヒーが似合う。
お酒に比べれば、いい方かな。
身体、壊さずに済むから。
………少しは壊すかな?
飲み過ぎは。
「いつもの、あったら買って来るから」
「うん。───」

飲み干したカップの底に、粉が黒く残っていた。
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