代償 2nd mean
「………何故だろうな。」
私を真っ直ぐ見る。
上時は逸らさずに、

「俺が死なないのは」

あんた………まだ償いかけてるもの、山程あるでしょ?
前、マスターに、言われたでしょ?
他人を傷付けまくって………。
生殺与奪のあんたが。

「………まだ、やること、残っているから、死ねないんじゃない?」
「何をしろと?またホストか?」
「違う」
「総長か?」
「違う───」
「じゃあ、何をしろと?」

何を………する?
何を………して欲しい?
………あ。

「───私、妊娠中なんだけど」
上時が少し驚く。
「………分かるでしょう?」
「………ああ」
「この子、産むから。子育て、するんだよ?」
「責任取れとな───するよ。それがする事ならな」

それが、本当の言葉には思えない。
空振りの声は、重さを感じさせない。

「───嫌な世の中だ」
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