桃の花を溺れるほどに愛してる
「あの……?」


 このままだと帰れないんですが……と、困ったような顔を浮かべて、そっと男性の顔色を伺う。

 男性はかわいらしい顔立ちに似合わず、妙に真剣そうな表情を浮かべていて、私は思わず生唾を飲み込んだ。


「あの!」

「はっ、はい?」


 いきなり大きな声を出されたものだから身体がビクリと震えた。

 男性は真剣な表情のまま、私の顔を見つめたまま、はっきりと言い放った。


「桃花さんのことが好きです!僕と付き合ってください!」


 ……。

 …………えっ?


 なんだろう?この状況は?私は今、告白されている……のか?しかも、遊びやふざけなんかじゃない、ガチの方で。

 そのうえ、初対面だと思わしき人に?こんな綺麗な人が、私のようなフツーの女子高生に?……ナイナイ。

 頭の中を色々な疑問や葛藤が飛び交う中で、どこか冷静でいる自分がいて。

 私はそっと口を開いた。


「……ちょっと待って。なんで私の名前、知ってんの?」

「えっ」


 彼はぽかんとした。
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