桃の花を溺れるほどに愛してる
 確かに私の名前は桃花だ。神代 桃花(かみしろ とうか)。それに間違いはない。

 両親はもちろん、友達や担任の先生は名乗ったから知っているだろうけど、この目の前の綺麗な人に名乗った覚えはない。そもそもどこかですれちがった記憶もない。

 まさか……。


「アンタ……ストーカー?!」

「ぅええっ?!」


 綺麗な人は目を見開き、驚きに似た表情を浮かべた。

 だとしたら、ヤバイ。このままここで呑気にお話をしている場合じゃない。ここから逃げないと……最悪の場合、このストーカーに殺されちゃう?!


「ちょっと待ってください!誤解です!僕は桃花さんのストーカーなんかじゃないですよ!」

「じゃあ、どうして私の名前を知っているわけ?!」

「それは……」


 彼はグッと言葉を噛み締めた後、早口でまくし立てるように言い放つ。


「僕が桃花さんのことが好きだからです!愛しているからですっ!」


 うっわー。この人、道端なのに平然と好きだの愛だの叫んでるよー。

 やっぱりなんか怖いかも……。

 でも、それは誰かから私の情報を聴いた……ということなのだろうか?

 見たところ、顔立ちは整っているし、身長も高いし、1つ年上の先輩だろうか?

 うわ、だとしたら平然とタメ語で離している私ってなんなの……。
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