桃の花を溺れるほどに愛してる
 小さくぺこりと頭をさげてお礼を言うと、榊先輩はにこりと微笑んだ。

 うわ、やっぱり榊先輩ってかっこいいなぁ……って、いかん、いかん。気をしっかりと保つのよ、私!


「それで……あの、本題とは?」

「うん。それなんだけどね……俺と、付き合ってほしいんだ」

「は?どこへです?」


 思わず素の声音がでてしまった。

 だって、付き合う?……はて、何故、私とどこかに付き合ってほしいなんて言われなくちゃいけないんだ?

 私よりかわいい子はそこらじゅうにいるし、何より、今交際中の彼女に付き合ってもらえばよいのでは……?

 わざわざ私なんかを指名しなくてもよいと思うんだけど……。


「あ、いや、どこかに付き合うとか、そういう意味じゃなくてっ。……恋人として、俺と付き合ってほしいんだ」

「はいっ?」

「ずっと、君のことが好きだったんだ」


 ……。

 ……おいおい、何やらおかしなことになりましたぞ?

 付き合う?恋人として?ずっと、君のことが好きだったんだ?……うん、榊先輩。ちょっと何を言っているのか分からないっすね。

 これは……京子じゃなくて、私が耳鼻科に行った方がいいのかな?

 ははは、中学1年生の時に言われたかった幻聴が、今、聴こえるよ。
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