桃の花を溺れるほどに愛してる
 まぁ、なんにしろ、榊先輩は今、恋人のいないフリーっていうことだよね……。

 それならだれかを新たに好きになって告白したって、別に問題はないよね!

 だけど、私は……。


「……榊先輩。あの、お気持ちはとても嬉しいんですが、付き合えない、です。ごめんなさい」


 春人に距離をおこうって言われて、綺麗な女性といるのも目撃しちゃったけど……まだ、正式にはちゃんと別れていないから……。

 今、ここで榊先輩の告白を受け入れちゃったら、私は二股をしていることになる。そんなこと、されるのはもちろん嫌だけど、私自身、したくもないから。

 だから、まだ、春人以外の誰かと付き合うなんて、私には出来ない。

 それに、私は今、榊先輩のことをどうとも思っていないから、こんな気持ちで付き合うなんて出来ないし、それこそ榊先輩に申し訳ないから……。


「……そっか」


 とても悲しそうな顔をした榊先輩に、胸の辺りがズキンッと痛んだ。


「もしかして、今交際中の男性のこと……気に病んでいるの?」

「えっ。どうしてそれを……?」

「登下校の時、いつも男性に車で送り迎えをしてもらっているみたいだったから……」


 ああ、春人に送り迎えをしてもらっているところ、見られていたんだ。

 そりゃあ、そうか。毎日登下校の時に送り迎えをしてもらっていたら、嫌でも人の目につくわよね。
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