桃の花を溺れるほどに愛してる
「あの、あなたは春人とどういう関係なんですか?春人の彼女さんじゃ、ないんですか……?」


 サングラスをかけながら運転している隣の女性に、恐る恐る声をかける。


「ああ、自己紹介が遅れたわね。私は夏美。春人は私の血の繋がった弟」

「あっ、そうなんですか。血の繋がったおとう……とぉぉぉおおおっ?!」

「何よ、急に大声をあげないでちょうだい。ビックリしたじゃない」


 ビックリしたというわりには、案外平然としているような……。


「えっ、夏美さん、血の繋がった弟と付き合っているんですか?!」

「はぁっ?!どうしてそうなるっ?!私と春人はただの血の繋がった姉弟であって、それ以上もそれ以下の関係でもないわっ!」


 えっ。


「いーい?いい加減に私と春人は恋人という思考を捨てなさい!」

「ごっ、ごめんなさい……」


 それじゃあ、最初から私の誤解?!

 それなのに……私の誤解なのに……私は春人の話を聞かないでいたどころか、春人に向かって酷いことを言ってしまった……?

 なに……それ……。

 私、本当に最低で最悪な、嫌われる女じゃないかっ!!!


「今の謝罪(それ)、私にじゃなくて、春人に言ってあげたら?」

「そのつもりです……!」


 一刻もはやく春人に謝りたい。

 あの日、あの時、ちゃんと春人の話を聞かないでいたどころか、酷いことを言ってしまってごめんなさいって……言いたい!謝りたいっ!
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