桃の花を溺れるほどに愛してる
「さぁ、ついたわ」


 夏美さんに言われて、窓の外に目をやる。

 って、あれ?ここって天霧総合病院……春人の職場じゃ?春人、今ここでお仕事をしているのかな……。


「ついてきて」


 車からおりた私は、先に車からおりた夏美さんの後を追う。

 うわ、さっきは暗くてよく見えなかったけど、夏美さんって背が高くてスタイルいい……っ!

 春人は春人でかっこよかったけど、やっぱりこれって遺伝?家族みんな、美形なんだろうなぁ……。


「夏美さん。春人が今お仕事中なら、会いに行くの……迷惑なんじゃないんですか?」

「ん?ああ、それなら大丈夫よ」


 何が大丈夫なのか分からないけど、夏美さんが言うのならそれに関しては大丈夫……なのかな?

 エレベーターに乗って3階についた私達は、真っ白な廊下を歩いて1つの個室――303号室――の前にやって来た。


「私はここで待っているから、はやく会いに行ってあげて」


 夏美さんにそう言われ、私はコクンッとうなずく。

 303号室の扉のノブを握り締め、私はゆっくりと横にスライドをさせて開き、中へと入った。
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