桃の花を溺れるほどに愛してる
 ああ。そういえば、さっき、怖い男を追い払うのに警察を呼んだって言っていたっけ?この人。

 じゃあ、わざわざ警察署に行く必要もない……のか?

 いや、もしかしたらそれは追い払う手段の1つにすぎなかっただけで、本当は呼んでいないのかもしれないな……。

 まぁ、どちらにしろ、早いところ警察の人にこの人を突き出したい……!


「それは――僕のことが嫌いだから、付き合えないということですか?」

「そうよ、そう!だいたい、ストーカーと付き合うくらいなら、死んだ方がマシよっ」


 目の前の彼の雰囲気が、スッ……と冷たいモノへと変わる。

 あっ、やば。
 もしかして怒らせちゃった……?

 ストーカーのことはよく分からないけれど、こういう時ってかなりヤバいんじゃないの……っ?!

 もう手遅れだけど、自分の放った発言に後悔した。

 目の前の彼は上着の裏側に手を突っ込み、キラキラと銀色に光るソレ――ナイフ――を取り出した。


「ひっ……!」


 それを見た私は、恐怖のあまりに喉から変な声が出た。

 その場から立ち去ろうと歩みを進めると、彼は私の腕を掴み上げる。
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