桃の花を溺れるほどに愛してる
 私ね、榊先輩に告白された時、榊先輩には申し訳ないけど、本当は気が付いていたの。

 榊先輩のことは好きにはならない、好きにはなれない。

 だって……。



 ――だって、私は、春人のことが好きだって、気が付いてしまっていたから……!



 だから。

 言わせて?



「……っアンタねぇ、」


 私の身体から発する、ただならぬオーラに気が付いた夏美さんは、ギョッと目を見開かせて後ずさった。


「あれだけ私に好きだの愛してるだのほざいておきながら、今更になって私を置いて勝手に死ぬなんて許さないんだから……っ!」

「えっ?桃花ちゃん?」

「とっとと目を覚まさないと、私、あんたに『別れる』って言うわよ?!それでもいいわけ?!」

「あの、さっきとキャラがちが……」


 夏美さんが、何やら後ろで恐る恐るといった感じで声をかけてきたけど、知るかってーのっ!

 私は必死に春人に訴えかけるけど、春人は目を覚まさない。それどころか、ピクリとも身体は動かない。


「私は、あんたのこと、好きなのに……!ようやく自分の気持ちに気が付いたのに……!勝手に死ぬなんて許さないんだからっ!!!」


 春人は、目覚めない。

 春人は、動かない。
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