桃の花を溺れるほどに愛してる
 なぜだろう。私に向けた背中が、「僕はヒトリで自殺します」と言っているようにも見えて……。

 このままだと、取り返しのつかないことになりそうな気がして……。


 ――気が付いた時には、私は天霧さんの背中に抱き着いていた。


「え……?」

「……って……わよ」

「桃花さん?」

「んもう!何度も言わせないでよね!付き合ってあげるわよって言ったの!」


 背中に抱き着いたままの私に視線を落とした天霧さんは、驚きのあまりに両目を見開いていた。


「それって……」

「勘違いしないでよね?私はただ、私のせいでだれかに死なれたくないだけ。迷惑だから。じゃなきゃ、何が好きでストーカー野郎と付き合わなきゃいけないのよ」


 私は天霧さんを刺し殺す勇気も力も気力も無いし、かといって私の知らないところで勝手にヒトリで死なれたら……それこそ胸糞悪いし。

 ただ、それだけのこと。
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