桃の花を溺れるほどに愛してる
……感じる、誰かの視線。
いつからだろうか。最近からなのか、はたまたずっと前からなのか……事あるごとに、誰かからの視線を感じるようになった。
当然、辺りをキョロキョロと見渡しても、私を見つめる人間など見当たらないのだけれど……。
最近になってその視線が濃くなったような気もして、言いようのない嫌悪感が私の中を駆け巡る。
まさか。まさか……ね。
頭の中にいくつかの候補が思い浮かぶが、あいにく、私の容姿は美人ではなくいたってフツーだし、決して自惚れるような容姿をしていない。
だから、誰かにつけられているとか、ストーカー行為をされているとか、そういうことはいっさい無いと思うんだけど……。
それにしても、気味が悪い。
「……桃花。聞いてる?」
「えっ?ごめん、聞いてなかった」
「んもー!だからね……」
親友の沢田 京子(さわだ きょうこ)は、先程から自分の彼氏の話をテンション高めに話し続けている。
幾度となるその会話の内容に、私は半ば聞き流していた。
「でねっ、彼ったら……桃花?」
「へっ?」
「アンタ……さっきから何か変よ?」
ぼーっと誰かからの視線のことを考えていたのが分かったのか、京子は不安そうな顔をしてみせた。