桃の花を溺れるほどに愛してる
「そんなぁ……」


 眉を八の字に下げ、肩をガックシと落としている様は、ご飯をお預けされた子犬みたいで、天霧さんに気付かれないように笑ってしまった。


「ダメなものはダメ!」

「うぅ……分かりました。それが桃花さんの望みなら」


 うわ。耳が垂れ下がった犬みたいに見えた。不覚にもかわいいなんて思っていない。ええ、断じて思っていない。


「……まさかとは思うけど、家の中以外には仕掛けてないよね?」

「え」

「……仕掛けているのね?どこ?」

「えっと……桃花さんが今着ている制服の内側ポケットと、カバンの中……です」

「今すぐに取り外せーっ!」

「はいぃぃぃいっ」


 天霧さんはわたわたとした手つきで、制服とカバンの中の監視カメラと盗聴器を取り出した。

 うわ、まさかそんなところに仕掛けられていたなんて……なんで今まで気が付かなかったんだ、私。
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