桃の花を溺れるほどに愛してる
「こっ、こここ、こちらこそ、よろしくお願いします……っ!」


 私も慌てて頭を下げた。


「それでは。あとは自分でなんとかするでしょうから、私は仕事に戻ります」

「はいっ」


 冬斗さんはにこりと微笑んだあと、春人のいる病室をあとにした。

 それにしても……春人って、ぜんっぜん冬斗さんに似ていないなぁ……。

 顔立ちは……まぁ、似ているような気もしなくはないけれど、中身に関してはまったく真逆というか。

 春人の中身は、お母さんに似ているのかな?どんな人なんだろう……?

 そういえば春人のお母さんについて何も知らないことに気が付く。

 お父さんが院長ということは、お母さんも看護師とか、医療関係の仕事をやっていたりするのかな?

 春人の家族について何も知らないわけだし、今度、聞いてみようっと!

 そう決意してから約1時間、私はずっと春人の隣にいて、春人の寝顔を見ていた。

 晩ご飯まではまだ時間があるし、もう少しくらいならここにいてもいいかなー……。

 それにしても、春人の寝顔をこうやって見ていると、いつもと違って無防備だからか面白いなぁ。

 うー、ん?面白いというより、かわいい……?とにかく、いつもと違った顔だから見ていて飽きない。
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