桃の花を溺れるほどに愛してる
「もうない?」

「はい。もうないハズです……」

「……“ハズ”?」

「もうないです!はい!」


 この様子だと、まだ他にも仕掛けられているんじゃなかろうか……。

 まぁ、とりあえず、あとは家に仕掛けられているモノを天霧さんに取り外してもらわないと……。

 私、家のどこに仕掛けられているのとかさっぱり分からないし。


「んじゃ、ついて来て」

「えっ?どこへですか?」

「決まっているでしょ?私の家」


 さらりとそう言う私に対し、天霧さんはリンゴか!と突っ込みたくなるほど顔を赤くさせた。

 ……こいつ、さては女の子の家に入ったこと、ないな?ウブにも程があるんでしょうが!程が!


「えっ、いっ、いいい、今から、ですか?」


 なんか、声震えているし。


「当然でしょ?それで監視カメラとか盗聴器を外してもらうの!」


 そう言うと、天霧さんはがっかりしたように肩を落とした。

 ……なに?ちょっと淡い期待でも抱いていた?それとも、やっぱり外したくないわけ?どっちも却下だけど。
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