桃の花を溺れるほどに愛してる
 天霧さんを置いていく勢いで家に向かって歩き出す私。

 「桃花さん、待ってくださいよー」と後ろから追ってくる天霧さん。

 ……なんだろう、この場面。シュールにも程があるでしょ。程が。


「天霧さんは私の家、知っているんだよね?ストーカーだから」

「うっ。……そりゃあ、まぁ。っていうか、僕のこと下の名前で呼んでくださいよ!仮にも恋人になったんですし!」


 アンタは恋人になる前から私を下の名前で呼んでいたじゃねーか。

 というツッコミは今回はスルーしてあげるとして、そうねぇ……それらしくしておかないと、やっぱりダメかな。面倒だけど。


「あー……じゃあ、春人」


 投げやり気味に呼び捨てで呼んだ。

 なんかこんな男相手に敬意を示して春人“さん”って呼ぶの、嫌になってきた。呼び捨てでいいよね、こんな男。

 はぁ……顔はとってもかっこいいのになぁ。どこで何を間違えて私をストーカーしだしたのやら。
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