桃の花を溺れるほどに愛してる
「ただいまー」


 私が玄関で挨拶をすると、奥の台所から母さんの「おかえりー」という陽気な声が聴こえた。

 ……やっぱり、春人のことを紹介とかしなくちゃダメかな?


「かあさーん、ちょっと来てー。お客さんが来たから」

「あら、そうなの?」


 と、奥の台所から姿を現した母さんは、春人を見て戸惑っているようだった。

 そりゃ、私が男を家に連れて帰ってきたこともそうだろうけど、かっこいいもんね、顔だけ。

 母さんが戸惑っているのもスッゴく分かる。


「あの、そちらの方は……?」

「はじめまして、こんにちは。僕は天霧 春人といいます。少し前から桃花さんとお付き合いさせていただいております」

「まぁ……!」


 母さんが信じられないといった様子で両手を口に当てた。

 そりゃ、まぁね。私も自分に彼氏が出来るとは思いもしなかったよ。

 いや、彼氏っていっても仕方なくなってあげているだけだけどねっ?!
< 24 / 347 >

この作品をシェア

pagetop