桃の花を溺れるほどに愛してる
「ばか」


 照れ隠しでそう言ったら、春人にあははと笑われた。

 これは……私が照れ隠しの意味で言っているって分かっている?!

 あー、もう!ばか!そういうところも含めてばかなんだよーっ!

 でも、もしも急用の連絡がきたら、私が家を出た時に家の前に春人はいないっていうことなのかな。

 家の前に春人がいなかったら、(何かあったんじゃ?!)って心配するんではなく、急用の連絡がきたからいないんだなって納得すればいいのかな?

 色んな会話をしていると、いつの間にか高校の前についていた。

 最近、送り迎えの間隔の時間がはやくなっているような気がする……。

 これって、アレかな?苦痛の時間の時は遅く感じるけど、楽しい時間の時はあっという間に感じるヤツ。

 ――って、それって私が春人の送り迎えしてくれている時間が楽しいっていうこと?!……はい。正直、めちゃくちゃ楽しいです。

 そんなこと……恥ずかしいし、死んでも春人に言わないけどねっ!


「んじゃ、行ってくるね!」


 私が車から出ようとすると、春人に手首を掴まれた。


「えっ?なっ、なに――」


 振り返ってみると、すぐ目の前には春人の顔が近付いて来ていて……。

 私になんらかの反応の隙も与えられないまま、唇が重なり合っていた。
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