桃の花を溺れるほどに愛してる
「っ?!」

「えっと……いきなり、すみません。き、き、昨日の、お返しで、すっ」


 顔を真っ赤にさせながら、まるで純情な乙女みたいな反応をする春人に、私の心がズキュンッと音をたてた。

 かっ……かわいいぃぃぃいっ!なんだ、こいつ!かわいいな、おいっ!

 私が男だったらその場で押し倒しちゃうほど……って、落ち着け、私。

 突然の春人からのキスだったから、ビックリしているんだな、うん。とりあえず思考を正常に戻そうか。


「桃花さん。嫌でした、か?」

「いっ……嫌だなんてとんでもない!嬉しかっ……た………し」


 春人の顔がまともに見れず、最終的には声量が小さくなっていく始末。

 うう、情けない……。


「えっと……それじゃあ、今度こそ、行くから!いってきまーすっ」


 なるべく春人の顔を見ないように、私は車を飛び出した。

 うっわー!そうだった!ここって高校の前だった!今のキス……だれにも見られていませんように!


「見てたわよっ」


 教室にはいると、キリッと真面目な表情の京子にそう言われ、私は落胆するように机に伏せた。

 やっぱり見られていたか……しかも、よりによって京子に……。
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