桃の花を溺れるほどに愛してる
【春人 Side.】


 ……桃花さんがでてこない。

 下校時間はとっく過ぎているのに、桃花さんのご友人である沢田さんは校門を後にしたのに、桃花さんはでてこない。

 桃花さんだけがでてこない。

 嫌な、予感がする。なんだろう。この嫌な胸騒ぎは。胸の辺りがざわついていて、落ち着きがなくなっていく。

 まさか、校内で桃花さんの身に何かあったんじゃ……?

 たとえば、生徒の誰かに告白されているとか!うわぁ、そんなことを想像しただけで、嫉妬で狂い死んでしまいそうだ。

 あとは……教師に呼び止められて教材の後片付けをしているとか!それはそれで、桃花さんと教師が2人きりになっているわけで、決していい気持ちはしない。

 ……校内に残っている理由って、それくらいじゃないのか?補習、のわけはない。だって桃花さんは頭はいい方だから。

 だいたい、誰かに告白されるとしても、教師に何かを手伝わされていたとしても、仮に補習だったとしても、桃花さんなら連絡をしてきてくれるはず。

 「遅くなる」って。

 そんな確信が僕の中にあった。
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